生存への信頼

Artist :
竹内ミズキ 〈水紀〉

Title :
水紀Collection
『地動演劇』

About Artist :
竹内ミズキ。2000年生まれ。 まちづくりと演劇教育のために豊岡に来ました。
ことば(詩)とからだ(身体)とひかり(映像)を使うことが多いです。
2023年から〈水紀〉として、私と演劇のための作品を作っています。
最近は透明な者たちを出演させたいと思っています。

concept :
竹内ミズキ 〈水紀〉による(20分の作品+休憩10分)× 4作品 × 4ステージ = 合計上演時間8時間の演劇公演。2024年4月の一ヶ月間期間限定で設営された”仮設劇場・時々”の劇場主催事業として上演。
タイトルの『地動演劇』は16世紀にニコラウス・コペルニクスによって提唱された「地動説」からとられている。従来の演劇公演を「観客(地球)は動かず、舞台(太陽や月や星)が動いている」という天動説的発想に基づいた上演形態と見立て、本作は「観客(地球)が生きている/動いているから、舞台(太陽や月や星)が動いていたり、動いていないように感じる」という地動説的発想で制作。1つの舞台装置を共有し4本の短編演劇作品がそれぞれ4回ずつ上演された。竹内ミズキは、装置との関わり方を観客に提示するファシリテーターとして公演に参加する。

1.『セカンドパーソン・アクティング』

一部の観客に台本に配布し、セリフを音読させテキスト上の指示を実行させる。テキストの内容は、今現在実施されているその上演についてのメタ的な言及であり、その様子を他の観客は混乱しながら鑑賞する。

2.『オリジナルの早口言葉を50個、五十音それぞれが頭文字になるように作ってください。』+『OUT-A=透明な胃袋』

『オリジナルの早口言葉を50個、五十音それぞれが頭文字になるように作ってください。』は、竹内ミズキとテキスト生成AIが、それぞれ作品タイトルにあるプロンプトの通り早口言葉を作成する。完成した人間とAIの早口言葉をテキスト読み上げAIに音読させ、映像生成AIに早口言葉を音読している人物の映像を生成させる。最終的にどちらの早口言葉が早口言葉として優れているかというジャッジを観客に求め、競わせる。

同時上演された『OUT-A=透明な胃袋』は、竹内ミズキの上演レパートリーの1つであり、竹内ミズキがつまらないと感じるものを鑑賞した際に、竹内ミズキのゲップが止まらなくなるという作品。本公演では、AIの生成した早口言葉がつまらないと感じた瞬間に、観客席で竹内ミズキはゲップが止まらなくなった。

3.『これはビデオ・インスタレーションではない』

スマートフォン画面内の映像がプロジェクターから投映される。映像の内容は、有名な古典映画や竹内ミズキの日々の生活風景を記録した映像のザッピングである。プロジェクターは360°自動で回転する仕様になっており、映像は、劇場内の壁、物、観客に投映されながら円周上に移動していく。スマートフォンはプロジェクターの上に設置されており、同様に回転しているが、ある時点からザッピング映像は途切れ、ビデオ撮影が始まる。撮影されている映像はリアルタイムでプロジェクターから投映されている。投映されている映像はリアルタイムでスマートフォンで撮影されている。撮影と投映は同時に行われるが、二つの行為の間には常に1秒程度のタイムラグが発生している。その全ての様子は竹内ミズキのInstagramアカウントからライブ配信されている。

4.『坐』

観客と竹内ミズキは客席で何もしない。直前まで作品が上演されていた場所で、最後の20分間は何もせずに過ごす。この公演は全体を通して、観客が生きているという事実を信頼している。

Release & Event :
2024.04.13・04.27

水紀Collection『地動演劇』
作・演出 竹内ミズキ
日程 : 2024.04.13(Sat) 13:00〜・04.27(Sat)13:00〜
会場 : 仮設劇場・時々

以下、当日配布されたパンフレット内の作者によるコメント

『地動演劇』のご案内(4/13・4/27)

この度は水紀Collection『地動演劇』にご来場いただきありがとうございます。
この作品は20分の演劇を4作品繰り返し行うものです。
どこか20分だけを楽しむこともできますし、8時間みっちり楽しむこともできます。
今回の上演は以下のようなスケジュールになっています。

上演時間が比較的長いですが、今作は4つの場面を4回繰り返します。
20分置きに10分の休憩があります。
つまり、4場面(上演20分+休憩10分)×4回=480分=8時間です。
20分だけをみたり、4場面みたり、好きなように入退場してください。

皆さんは、
車座になる「常舞台(とこぶたい)」か、
車座にならない「現舞台(うつしぶたい)」か、
好きな席に座ることができます。

このショーには、きみが考えずにはいられない「現状という不自由から脱出したい気持ち」と「脱出したいという気持ちから脱出したい気持ち」が登場します。
演劇の条件を仮に”生/Live”=非再現性とすると、それは不平等と不自由であることが出発点になります。
来場の際によくわからないと感じたら、「何がみえるか、みえないか。何ができるか、できないか。」を考えて上演に参加してみてください。

[参考]
全体を通して
・河原温「日付絵画(Todayシリーズ)」

『オリジナルの早口言葉を50個、五十音それぞれが頭文字になるように作ってください。』
使ったAIソフト
・ChatGPT・VOICEVOX・Vidnoz AI・Vrew

『これはビデオ・インスタレーションではない』
・ルネ・マグリット『イメージの裏切り』(1929年)
・ウィリアム・K・L・ディクソン『フレッド・オットのくしゃみ』1894年1月9日
・ アルフレッド・クラーク『メアリー女王の処刑』1895年8月28日
・リュミエール兄弟『工場の出口』1895年12月28日
・リュミエール兄弟『ラ・シオタ駅への列車の到着』1896年1月25日
・ジョルジュ・メリエス『月世界旅行』1902年9月1日
・ルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』1929年6月26日
・チャップリン『独裁者』1940年10月15日
[解説の脱]

『地動演劇』
「地動」は「地動説」から取っています。
「観客(地球)は動かず、舞台(太陽や月や星)が動いている」という天動説的考え方から、「観客(地球)が生きている/動いているから、舞台(太陽や月や星)が動いていたり、動いていないように感じる」という地動説的考え方で演劇を作りました。
改めて五感に意識を向けると、私たちが見ているのは舞台上の何かではなく、すべては私たち自身の皮膚や水晶体、粘膜を動かすエネルギーでしかないことがわかります。つまり、劇場の中に私たち人間がいるのではなく、私たち自身が劇場なのです。
私は4つの作品を用意しました。この4つは私たちの自身の外側/劇場の外側にあるもの=宇宙・世界の一部ですが、私たちが宇宙・世界を改めてみつめるためには、たとえば星や動物や風などの刺激が必要です。作品というのは、そうした刺激として宇宙・世界を見つめなおすための装置です。
4つの装置を楽しんでください。

『セカンドパーソン・アクティング』
この作品は、「与えられたものの違い」と「得られるものの違い」について扱っています。
二人称的に「言葉を見ること」を通して、人が人称を混乱します。
目の前の人の見えていることを考えていると、足元が歪んでいきませんか?
主観の混乱を楽しんでください。

『オリジナルの早口言葉を50個、五十音それぞれが頭文字になるように作ってください。』
この作品の上演中、私は『OUT-A=透明な胃袋』という作品を実演します。
『OUT-A=透明な胃袋』では、私は何度もげっぷをします。
理性と本能、AIと動物、客観と主観、平等と自由のはざまで、あなたは何を思いますか?
早口言葉のリストは差し上げます。

『これはビデオ・インスタレーションではない』
この作品では撮影・配信をします。撮影・配信されては困るという人は現舞台にお座りください。
「地動演劇」全体でモティーフとされている河原温「日付絵画(Todayシリーズ)」にご注目ください。
なぜこれが「ビデオ・インスタレーション」ではなく「演劇」なのか、考えてください。
何が、何に投影されていたのか、教えてください。

『坐』
人 人
 土 

竹内ミズキ〈水紀〉

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Release & Event :
2024.04.06