存在は移動する上演

interview by Yumeki Kobayashi

竹内ミズキ
2000年生まれ。兵庫県豊岡市日高町江原を拠点に活動する劇作家・演出家。2021年にまちづくりと演劇教育のために豊岡市に移住。但馬アーツコモンズを学生メンバーと設立し「地域と芸術と学生をつなぐ」をテーマにウェブメディア『HIBOコモンズ』の開設をはじめ様々なイベントを企画。2023年から〈水紀〉として演劇作品を制作をスタートし、アーティストとしても精力的に活動する。髪型はスキンヘッド。

20Question

Q1.名前の由来について教えて?

本名のミズキは漢字で水紀。母親が万物の始まりは水かも?ということに気がついて、水に紀をくっつけて水紀になった。世界最初の哲学者タレスも「万物の始まりは水」と言っていて、母親はタレスに自力で追いついたっていう。

活動するときの名前をカタカナにした理由は、演劇教育に関わっていたくて、子供達に覚えられやすい名前がいいなと考えたから。自分が中学生くらいのときは漢字四文字の名前が覚えづらくて、ひらがなとかカタカナが入ってる名前は覚えやすかったっていうのを思い出して、ミズキになった。

でも、そうしたら漢字の水紀が消えちゃって、せっかく母親が良い名前をつけてくれてたのにもったいないと思って、創作活動をするソロユニットの名称を〈水紀〉にした。

〈水紀〉は、今はまだ企画ごとの単発のパフォーマンスをやっているけど、これからは1年間とか5年間とか長期的に上演し続ける作品を作っていく予定で。本名をそのまま屋号にしたのは竹内〈水紀〉という存在自体が移動する上演になるように。

Q2.演劇と出会ったタイミングについて教えて?

高校1年生の時に部活で演劇部に入ったのが最初の記憶。通ってた高校が部活に絶対入らないといけなくて、汗かきたくないから運動部はなしで、音程とかわかんないし音痴だったから音楽系もダメで。そしたら教室から3歩でいけるところが演劇部の部室だっていうのを先生がホームルームで言ってて、それ聞いて即部室行って入部した。活動も週三日で楽そうだったから。

そんな理由で演劇部に入ったのが演劇との出会いで。自分は珍しいタイプだと思うんだけど、好きな演劇作品に出会うより先に演劇のワークショップがおもしろい!ってなって。部活にプロの講師が来て開いたワークショップがすごく面白くて、そのワークショップを完コピして再現したりしてた。だから最初は作品づくりより、ワークショップづくりやファシリテーションが好きで、演劇おもしろい!と思ってたのを、覚えています。

Q3.演劇教育に興味を持ったきっかけは?

演劇教育に興味を持ったのも、多分そのワークショップからかもなー。ワークショップを面白いと思ったのにも理由があって。
当時日本の政治的なこととか、学校教育や現代の価値観に疑問がたくさんあって、批判的だったから。授業とか真面目に聞く気になれなくて、先生も舐めてた。適当に授業している先生を特に舐めてた。こっちは人生で一度しか聴かない授業なのに、先生は繰り返してるものとしてやってる。毎回新鮮な気持ちでやってないって、こっちが分かっちゃう授業は聞く気になれなかった。

だから部活で演劇教育のワークショップみたいに授業をファシリテートしてくれる教員が増えたらいいのにと思ったんだよね。これは教員だけに思うことじゃなくてあらゆる教育的指導全てに対してそう思ってる。上司と部下とか、親と子とか、地域の文化継承とか含めて、演劇流のファシリテートを身につけた人がやるべきだと考えるようになって。そうであれば面白いなと。

______竹内が今やってる演劇教育に関連する活動ってどんなの?

今は、児童劇団でアシスタントをしたり、学校のコミュニケーション教育の現場に行ったり。

あとは、こないだ中高生向けの演劇ワークショップの企画を立ち上げました。『演劇ってなんだろう?』っていうタイトルで。演劇の面白さを知るための、参加ハードルの低い感じで2時間から参加できるワークショップをGWにやりました。2時間×4コマで好きなように参加時間が選べるワークショップ。主催は一応豊岡市民プラザ・Platzで、企画はHIBOコモンズで立ち上げました。

Q4.演劇作品を創作をする上でのテーマは?

キーワードで言うと、

・演劇の形式化
・形式的演劇の解体
・近代演劇の現代化
・脱稽古
・脱集団創作
・脱人体
・脱人間中心主義

などです。演劇というものが持っている要素は現在の俺ができることの中で最も社会の課題を解決できる手段だと思っていて、ただ、現在の日本で作られている現代演劇のほとんどはその機能を果たしていないから、”演劇の持っている実力を発揮させる”というのがテーマ、つか提案。演劇にはポテンシャルがあるから。

今の現代演劇って、こいつ100メートル10秒で走れるのにアームレスリングしかさせてもらえてないじゃんって感じ。めっちゃ足速くてなんならトライアスロンもできるのに、そりゃアームレスリングも人並みにはできるかもしれないけど、こいつの得意種目それじゃないじゃん。って状態。演劇を走らせてあげたい。すっげえ生意気なことを言ってるけど、現代演劇基本全部つまんないって思ってるから。面白いけど、別にそれ演劇でやらなくてよくない?って思う。アームレスリングはアームレスリングの選手がやった方がいいと思うよ。演劇は陸上選手だよって。

Q5.“まちづくり”という言葉について考えていることを聞かせて?

んー、まずまちづくりをしてる人は豊岡にはたくさんいるんだけど、ちゃんとできてる人と全然うまくいってない人がいると思ってて。「地域をよくする」とか「地域を盛り上げる」とか、よく聞くんだけど、全然うまくいってない人は「地域」っていう架空のものを見てるような気がする。「地域の人が喜ぶ」とか「地域の人にとって良い」とか。

例えば今住んでる豊岡市日高町江原だったら、江原っていう尺度で、もっというと隣に住んでるなになにさん、なになに家、って尺度でしゃべれると思ってて。江原のなになにさんがどんな人で、何に困ってて、まちづくりについてどう思ってて…っていう、顔も名前も思い出せるような関係性を築けていないと、見えていないと、まちづくりがフィクションとして、物語としてやってるだけにみえちゃう。それでは誰もそのまちづくりに協力してくれないし。経済効果や何人動員されたとかそういう数字は、まちづくりを進めていく上での継続的な支援や資金の獲得をするためのただのアイテムでしかなくて、本質は地域の課題を解決して一緒に前に進んでいくこと。まちづくりにアプローチしてるとき、細かい人々を思い起こせるかが重要だと考えてます。

https://maps.app.goo.gl/mqGc51Z3jM7hqtPa9

______今は具体的にはどんな活動をしてるの?

ゴミ拾いをして、神輿担いで、運動会に参加して、夏祭り出たり。最近だと、近所の人と一緒にご飯を食べたり、買い物に行ったり、家の掃除やBBQを一緒にやったり。

江原がいい町だっていうのを学生に知ってもらうために江原ツアーみたいなのを不定期でやってる。江原に引っ越してくる人が増えたらいいなと思って。町というより土地と人を紹介するっていう。江原のいろんな人に時間を作ってもらって、街を案内していく途中でその人の家にお邪魔して、挨拶して、また次の家に向かって歩くみたいな。

あと10月に江原のためのイベントをやろうと思ってて、他の企業とかと一緒にやるのをあわせると20個ぐらいのプログラムを10日間かけてやる予定です。

あと、まちづくりでいうと、江原に一番詳しい人になりたい。それぞれ建物ごとの歴史とかを江原の住民に聞いたりしてる。江原に住んでまだ3年の若造が、一番江原に詳しかったら、なんかいいと思っていて。

Q6.但馬アーツコモンズとHIBOコモンズについて教えて?

但馬アーツコモンズがこれまでにやったことでいうと、全担バスと連携して『バスカフェ』っていうプロジェクトをサポートしていたり、豊岡演劇祭の期間に江原のミーティングスポット内でのイベントを企画したり、公演の後に『感想シェア会』っていうのをやって、学生公演の後にお客さんが意見交換できる場所を作ったり、それこそさっき言った中高生向けのワークショップを作ったり。

但馬アーツコモンズの活動のテーマは「地域と芸術と学生をつなぐ」です。例えばワークショップをすることで、地域の子どもたちと演劇を繋いだり、演劇の文化施設同士とか、公演同士を繋ぐことで、地域の人たちが演劇の情報を手に入れやすくなるようにしたり。

あと、そういった観点で駄菓子屋を始めようとしています。駄菓子屋を作って地域の人たちが交流できる場所を作ることができれば、そこで演劇とか芸術とか学生とか出会う機会になっていく。

学生同士、地域同士、芸術同士が繋がるということが、三者「地域」と「芸術」と「学生」を繋ぐために実は重要なんじゃないかと考えてます。2024年中にはNPO法人化したいと思ってます。

その活動の一環としてHIBOコモンズという広報活動をしています。今バラバラに広報されている豊岡市の芸術に関するイベントの情報が全部手に入るSNSがあるとみんな便利なんじゃないかなと思って、運用してます。

HIBOコモンズ

意外と城崎国際アートセンターは常連だけど江原河畔劇場のことは全然知らないっていうことが、逆も然りなんだけど、結構あって。一人二人とかの話じゃなくて。豊岡で演劇のまちづくりをしている人でこの課題に気づいている人は少ない。都市部なら30分くらいの移動って大したことない感覚だけど、豊岡の人からすると江原〜城崎の移動ってめっちゃ遠いらしくて。だから行かないみたいですね。行かないし知らないし。江原と城崎は同じ豊岡市だけど、別の町だからね。他県のような感覚でいると思う。結局慣れの話でもあると思うんだけど。

あと、豊岡の文化施設ってちゃんと棲み分けがされていて、お互いの顧客を奪い合わないようにしてるんだよね。すごく気を遣っていて、なるべく催しのジャンルや方向性が被らないようになっている。だから、お客さんがそれぞれ他の町の文化施設に関心を持てないのは、少しもったいないと思っています。ここの情報がうまく繋がるようになったら、この距離感でもお互いの顧客も共有できると思ってるし。

Q7.これから行きたい場所は?

行きたいっていうか、今度北海道(美瑛)、ドイツ(トリーア)、フランス(アヴィニョン)に行くことが決まってる。

行きたいのは、昔はもっとあったはずなんだけど、今は行きたい場所、大きくは東南アジアの島国諸国には行きたいかも、島にある伝統的なお祭りとか踊りとか、月並みだけどずっと面白いなと思ってるから。

https://maps.app.goo.gl/TY7JTYuDFLjmcKL67

https://maps.app.goo.gl/GXUzXNx4nYxUxvQs9

https://maps.app.goo.gl/SLH3y4CLk5z8axfj7

Q8.ファッションのこだわりは?お気に入りのアイテムなど

基本貰い物しか着てない。こだわりは、おしゃれな格好をしようとしないこと。おしゃれな格好してると恥ずかしいので、文脈のない装いとして身につけるおしゃれは恥ずかしくなっちゃうのでしない。

Q9.思い出の料理ってある?

思い出の料理は牛丼特盛ですね。八王子にある松屋。ホームレスをしていたときに二週間ぶりにまともな飯にありついた。当時お世話になっていた劇場職員の方が奢ってくれた。味覚が一個一個弾けていくぐらいの美味しさ。体の全てが弾け飛ぶみたいな。極限状態だったから、口にいれる前に泣いた。着丼した瞬間匂いで涙が止まらなくなった。

Q10.お気に入りの映画を教えて?

『追悼のざわめき』

高校の時お世話になった先生が助監督をしていた映画。1988年の作品。映画っていうのは写真の延長なんだな、演劇ではないんだなって。

https://filmarks.com/movies/24687

ちなみに最近見たのはドラえもんの映画で、映画なのかな?藤子不二雄映像集の

『21エモン 宇宙へいらっしゃい!』(『ドラえもん 僕、桃太郎のなんなのさ』と同時上映)

https://filmarks.com/movies/32060

https://filmarks.com/movies/14532

めっちゃ面白かった。

______なにそのタイトル笑

Q11.よく使う絵文字は?

✌️

あと自分に似てるスタンプがLINEにあって、これもよく使ってます。

Q12.最近買ったものは?

家、土地、車。

______!?

え、声に出すとすごいな。正確にいうと家と土地は貰いました。車もフリードに乗ってたんだけど、車検の更新が経済的に無理で、大きい車の必要性もなかったから、地域の友達になった人に軽自動車に乗り換えたいと相談したら、自動車の整備会社にいくつか連絡してくれて。何件か回って車検切れてるフリードと、車検更新仕立ての軽自動車を5万で交換してくれる人が見つかった。だから実質タダより安くもらっちゃった。

家は空き家を贈与してもらって。それも地域の人に俺たちが駄菓子屋とかやりたいって相談してたら、10年くらい空き家で貰い手に困ってる物件を紹介してくれて譲ってくれた。

だから買ってないね。どれも貰い物。本当の買い物は、さっき卵買った。

Q13.今気になっている単語3つ教えて?

・装置
・ファシリテーション
・物体としての人体

______それぞれについて詳しく教えて!

3つとも作品に関わることなんだけど、俺はこれからの演劇は「装置」(台本や劇場、SNS、俳優)と「ファシリテーション」(装置との向き合い方を示す)の時代になると思って。ファシリテーションによってただの置物から想像力を刺激する装置になる。その想像力を刺激する装置というものが「演劇」と呼ばれるようになっていく思ってる。

今まで「人体」のことを演劇では「肉体」や「身体」と呼ばれていた。「肉体」は野生みを感じる。「身体」はポストモダン的だよね。でもそうじゃなくて「人体」を物体として、犬も猫も木も水も鉄も同じ物体としてフラットに捉えたところから出発したら、偏見のない作品が作れるかもと考えてます。

Q14.最近読んだ本は?

町制50周年記念誌『ひだか辞典:愛するふるさと ひだかの宝』

町としての日高町ができて50周年を記念して書かれた408ページの本です。

https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA72008001

Q15.好きな漫画とかある?

『ギャグマンガ日和』と、十年ぐらい読んでないけど『ワンピース』

手塚治虫の作品も好きだし、あとは『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』とか笑

やっぱ面白すぎるよなぁ。鼻毛とかうんちとか言ってるだけで面白い。読むのは子供だけど描いてるのは大人だと思うと二重の意味で面白い。

Q16.ガッカリしてしまう他人の言動は?

わーめちゃくちゃあるんだけど、めちゃくちゃあったんだけど、最近は全然ない。ガッカリしないんだよな。ガッカリされることはめちゃくちゃあるけど。出来事に対してガッカリすることはあるけど、言動にはあんまりないかな。

あ、あるとすれば、できてないのにできてるみたいな言い方されたら、ちょっとがっかり。自分が関わってること限定でね。外側に対してはうまく言わないといけない場面はあると思うけど、内側のチーム内で全然上手くいってないのに、「上手くいきました」って言われると、そこ守りに入るんだって思っちゃう。チーム内で上手くいってない時は、「上手くいってない」って言えるようになったほうが良い。

Q17.信じていることを一つ教えて?

演劇は社会の課題を解決できる

Q18.竹内ミズキに影響を与えた一曲ってある?

少年の詩 – THE BLUE HEARTS

https://tower.jp/item/2816321/THE-BLUE-HEARTS

Q19.竹内ミズキの活動について情報をキャッチできるプラットフォームはある?

はっ!なーい!んー番更新できそうなのはTwitterかな。インスタとFacebookも一応ある。

Q20.最後に、何かアナウンスしたいことはありますか?

但馬アーツコモンズはもうすぐ協賛を募集すると思います。

HIBOコモンズのSNS各種Twitter・Instagram・Facebook・公式LINE登録してくれると助かります。但馬の演劇公演の情報が届きます。

HIBOコモンズ

2024年10月に江原でイベントするので遊びに来てください。
https://maps.app.goo.gl/mqGc51Z3jM7hqtPa9

NPO法人を一緒にやってくれる人も募集しています。俺に連絡ください。

あと駄菓子屋を始めようと思ってるので、一緒にやってくれる人も募集してます。俺に連絡ください。

あと、2024年4月に実施した『帰依と忘却』第三部の募集も受け付けています。詳しくはnotoをご覧ください。
https://note.com/sey_sing_cuckoo/n/n5008b0d77f83?sub_rt=share_pw

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